-- ベテラン俳優の方が多く出演されている『旭山動物園物語』ですが、撮影現場はどういう雰囲気だったのでしょうか?
映画に出ている動物達を上回るくらいに、強力な個性を持ったおじさん役者がいっぱい出ているんでね……まるでどっちが檻に入っているのか解らないくらい、役者達が動物園の空気にスーッと溶け込んでいましたよ。それにみんな、自分の役どころっていうのを、ちゃんと捉えているというか、しっかり見つめてるというか。動物園の飼育係であったり、園長であったりと、俳優達の気持ちが役にすんなりスライドできていたように感じました。
-- 撮影時の印象に残っているエピソードは?
そうですね、多々あるんですが……とくに、動物がらみのシーンは印象深いです。オスのチンパンジーがメスのチンパンジーにバナナを手渡すシーンがあるんですが、撮影の時は、動物園の檻の前で4~5時間もの間、いつでもカメラをまわせる状態で待っていました。待ち時間も多く大変でしたけど、意図した映像が撮れた瞬間は、ある種の充実感や満足感がありましたね。
-- 休憩中、動物園を見学することがあったとか?
みんなそれぞれ、好きな動物がいる場所にバラバラと散っていって……僕はよく、シロクマの前から離れずにいましたよ。好きな動物を見にいくというより、会いにいってたんですね。この作品自体に“動物に会いにいく”というコンセプトがあるんですが、僕らも実感として「動物園っていうのは、動物を見るんじゃない、会いに行く場所なんだよな」っていう思いが、胸に芽生えたんだと思います。
-- 滝沢園長の役は、実際に旭山動物園の園長でいらっしゃる小菅園長がモデルとなっていますが、演技の際は小菅園長の人柄などを参考にされたのでしょうか?
小菅さんを見つめることによって、その一挙手一投足が、全て参考になりましたね。それに小菅さんにお会いした時、その人柄や動物に対する思いが、僕にはあっという間に理解できたと感じたんです。
僕が小菅さんに感じたのは、動物達に対して人間が何かを「与えてやっている」という上からの目線ではなく、野生や動物達の能力に対する敬意。そして、その動物達の能力を最大限に発揮できるような環境作りとは、どうゆうものかっていうことを真摯に考えた結果、現在の旭山動物園があるということです。
そこに至るまでの小菅さんの思いというのが、なんだか僕には、手にとるように理解できた。つまりそれは、人間の立場から野生の動物達を的確に理解し、命の平等さを、ちゃんと自分の中で定義できているってことだと思います。
-- マキノ監督とは、本作についてどんなお話しをされましたか?
最初にオファーがあったのは、3年くらい前だったと思いますけど、その時「いずれ、あの旭山動物園をテーマにした映画を撮りたいと思ってる」と監督から聞きました。僕自身も、それはもうぜひ、やりましょうというお話をして。それから、どんな役どころですか? って聞いたら、たぶん園長になると思うとおっしゃってました。その理由については「西やんと小菅さんが、妙に似てるかもしれない」と。
監督が似てるって感じたのは、顔だったのか、考え方だったのか……その点は、ミステリーなんですけど。でも、僕がはじめて小菅さんを拝見した時にも「確かに自分と似てるな」と思いました。
-- 小菅さんのどんな部分が西田さんに似ていると感じられたのですか?
特別にルックスが似ているというわけじゃないんですけど……。なんていうかなぁ“いきざま”とでも言うんでしょうかね。小菅さんには、僕が園長役をやるって伝えた時「もっと二枚目がよかった」なんて冗談言われましたけどね(笑)。僕は「何を贅沢言ってんだ、本当に僕で良かったよー」って言い返しましたよ(笑)。
-- ご自身が出演されている中で、お気に入りのシーンは?
うーん、いいシーンが連続的にあったんで、全てなのかなぁ……。でもやっぱり、ラストシーンが一番印象に残っている。滝沢園長が引退して動物園を去る時に、動物達が咆吼しはじめて、園長を送るシーンですね。
あのシーンは台本を読んだ時、何度読み返しても涙が出てきたんですけど、現場でもやはり落涙してしまって。撮影の時は、小菅さんもいらっしゃったんですが、彼は今年の3月、実際に勇退されるわけです。その思いを、僕がひと足先に味わわせてもらったんですが、小菅さんの気持ちが痛いほど解りました。
これだけ情熱をかけた仕事でも、必ず終わりがくるんだ、ということがね。これは、今、団塊の世代の人間達がみんな味わってることなんだけど、僕自身も、彼らと同じような気持ちになって映画のフィニッシュを迎えると思ってなかったんで、ちょっとびっくりしました。
この作品は、団塊の世代の人達に送る、一つのメッセージでもあると思います。





