スペシャルインタビュー

吉田強役/中村靖日さんインタビュー 「映画に出演することになった役者の中村です! と、アポなしで旭山動物園にうかがいました(笑)」

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-- 完成した『旭山動物園物語』の感想を教えていただけますか?

役者の仕事をしてますと、どうしても仕事の目線で作品を観てしまうことが多いんですが、この映画に関しては、すんなりと観客の気持ちになって感動することができました。
    というのも、僕が演じた吉田強や、そのモデルになった副園長の坂東元さんに、自分と共通するものを感じたからです。ですから作品を観ていると、吉田と自分自身が重なって、劇中で吉田にかけられる言葉が、そのまま自分自身に向けられているような気持ちになりました。

-- 吉田強と中村さんの共通点とは?

少年時代の吉田強は、友達との付き合いよりも、昆虫や動物と接することに“楽しみ”を見いだしていた子供でした。そして大人になってから、動物園の飼育係として働くようになります。僕の子供時代にも友達が少ない時期がありまして、その時“映画”というものに興味を持ち、その延長で、現在、役者の仕事をしています。それぞれ興味の対象こそ違いますが、子供の頃に見つけた自分なりの“楽しみ”を現在の仕事にしているという点で、自分の人生と重なる部分が多いと思ったんです。

-- 役のモデルになった坂東さんとお会いする機会はあったんですか?

この役を演じることが決まった時点で、少しでもいいから坂東さんとお会いしたいと思いまして。自分の想いを手紙にしたためて、アポなしで旭山動物園にうかがったんです。「映画に出演することになった役者の中村です! 坂東さんに会わせてください」と、動物園の受付の方にお願いしたんですが、その時の僕は、雪まみれでデロデロの姿だったんで、そうとう不審に思われたんじゃないですかね(笑)。
    その日は坂東さんがいらっしゃらなかったので、翌日、もう一度、動物園に参りましたら、広場のあたりで坂東さんを見つけて。目があった瞬間にお互い「あ!」っという感じに……ようやくお会いできたわけです。

-- 坂東さんとお話された印象はいかがでしたか?

僕が坂東さんに感じたのは、動物を飼育して、お客さんに楽しんでもらうことに半生をかけた人間の、ある種の迫力のようなものです。しかし、そういう“岩”のように重厚な迫力を持ちつつも、動物の話になると子供のように無邪気にお話をされる方でした。動物に何十年も接している方の雰囲気が実感できたので、撮影前に少しでもご本人にお会いできて、本当によかったです。

-- 撮影時、監督にたくさん叱られたというお話をお聞きしましたが……

それはもう、すがすがしいほどに叱られました(笑)。とくに、クランクインしてすぐに、僕の芝居にある“クセ”に関して監督から注意されたんですが、あらためてもまた同じクセが出てしまって。「中村靖日さん、また(クセが)出てますよー」と監督に言われた時は、さすがに情けなくなって、撮影の後、こっそりと謝りに行ったこともあります。その時、監督は“にっ”と微笑みながら「オレも昔、同じことを監督に怒られたことがあるんだ。だけどそれは、オレが45歳の時だった。中村は今、35歳だろ? オレより10年早く気づいたんだから、しっかりやれよ!」と励ましてくださって。
    なんて懐の深い方なんだろう! と、監督の厳しさの中にある愛情をあらためて感じました。
    ちなみに、そのクセが何かというのは……内緒にさせてください(笑)。

-- 西田さんほか、ベテラン俳優と一緒のお仕事はいかがでしたか?

皆さん、僕が子供の頃からスクリーンやTVで拝見してきた方なので、まず、その存在の大きさに圧倒されたと言いますか……。そこにいらっしゃるだけで、独特な“空気”ができるんですよ、本当にスゴい。
    自分はまだまだ至らない点が多かったのですが、そんな皆さんに、非常に厳しく、でも、あたたかい言葉をいただきながら、自分にとって夢のような経験ができました。

-- 動物との撮影はいかがでしたか?

作品の中で、吉田強がアザラシにエサを与えるカットがあるんですが、ただ、エサをやるだけなのに、撮影にすごく時間がかかりました。
    というのも、何度やっても僕が近寄っていくと、アザラシが逃げちゃうんです。
    どうすればいいだろう? と考えたとき、実際の飼育係の方が動物に話しかけてるのを思い出しまして。「おはよう」とか「ご飯おいしいね」とか、人間の言葉なんて解るはずないと思うんですけど、どうして話しかけるんだろう? と考えた時に、飼育係の方が本気で動物に気持ちを伝えようしているからだと気づいたんです。
    だから、僕もアザラシに話しかけようと(笑)。
    「こわくないよー、大丈夫だよー、美味しそうだねー、ホッケ美味しそうだね」と語りかけながら、ちょっとずつ近寄っていくと、30分ほど経ったころ、ようやくエサをあげることができました。

-- 旭山動物園の感想は?

旭山には、特別に珍しい動物はいないんですけど、見せ方が本当に素晴らしいんですよ。
    僕がはじめて旭山動物園を訪れたのは、“坂東さんアポなし訪問事件”の時だったんですけど(笑)、その時、一番感動したのは、アザラシでした。
    アザラシは、北海道では珍しい動物ではないのですが、円柱水槽をヒューっと泳いでいる姿を見ていると、なんていうか……とてもキレイな浜辺にいる時のように、何時間でもそこにいたい気持ちになったんですね。
    これは風景と同じで、自然のままに近いモノを見せてもらってるんだなぁと。今まで体験したことのない感動でした。

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-- 最後にファンの皆さんへメッセージをお願いします!

お子さんからお年寄りのお客様まで、それぞれの方が、いろいろな感じ方で楽しんでいただける映画だと思います。それに、難しいことをぬきに、エンターテイメント作品としても楽しんできただきたいです!

プロフィール

中村靖日(なかむら・やすひ)
1972年生まれ。武蔵野美術大学大学院修了。映画、テレビ、CM、ナレーションを中心に俳優活動を展開。05年にカンヌ国際映画祭批評家週間に出品された『運命じゃない人』に主演し、素朴で温かな存在感が注目を集める。主な映画出演作に、『サクゴエ』(07)『しゃべれどもしゃべれども』(07)など。『旭山動物園物語』では、新人飼育係の吉田強役を演じている。