スペシャルインタビュー

監督/マキノ雅彦さんさんインタビュー 「奇跡的に撮影できた、動物達の豊かな表情。動物園の動物が、ありのままに輝く姿を観に来てほしい。」

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-- 旭山動物園のどんな点に魅力を感じて、映画化しようと思ったのですか?

TVのドキュメンタリー番組で旭山動物園を観てね。そこに映っていた動物たちの活き活きとした動きに感動した。あんなにも魅力的に動物達の姿を表現した園長や飼育係は、そうとうな“つわ者達”に違いない。「これは、映画にする価値があるぞ」と直感した。早速、取材を進めていくうちに、その直感はどんどん確信に変わっていった。映画が完成した今、やっぱり、宝の山を掘り当てたぜって感じで大感動しているよ。

-- 『旭山動物園物語』を通して、監督が観客に伝えたいメッセージとは?

旭山動物園の人たちを取材していく中で、はっきりしていったことなんだけど……。まず、野生動物っていうのは、弱肉強食が本質。強い者が生き残っていくことが、種の保存にとって一番大事な使命なんだ。弱い者は淘汰され、他の動物の食べ物となる。そして全ては土に還る。その、野生動物の尊厳をバックに描きながら、人間の素晴らしさを強調したかった。人間だけは、弱い者を生かし、弱点を個性として育て、大成に導くことができる叡智を持っている。それがこの映画のテーマなんだ。

-- 監督が言う“人間の素晴らしさ”とは、具体的にどのようなものなのでしょうか?

旭山動物園物語の中で出てくる。主役の吉田強のモデルは、旭山動物園の坂東副園長のことなんだが、少年時代、いじめられっこで、人間嫌い。だが昆虫や鳥には好奇心を持てた。あの醜いサナギがどうして蝶になるのか不思議でその瞬間を確かめたくて昆虫に魅せられたという。インタビューした時、彼が「ツバメの雛が育つまで、親鳥は何回、エサをやると思いますか?」って聞くんだ。その答えは「2,600回」。つまり彼は、その間ずーっと目を離さず数えてたという訳なんだよね。すごい根気だ。
    仏教では、人間の能力の源のことを「器根(きこん)」とよんでいる。これはつまり、根気のこと。坂東副園長の場合も、昆虫や鳥への好奇心が集中力を生み、集中力が根気を育て、あの素晴らしい観察力という能力を誕生させたんだね。その観察力が、旭山動物園の小菅園長の手によって発展し、旭山動物園の行動展示となって花咲き今日の成功に繋げることができたんだ。
    この弱い者の能力を育て、導くということは、野生動物には絶対にできない。掟に背いて弱いものを救い、弱者の種を遺すということは、種の絶滅につながるからね。人間の叡知は、弱者を人の世の美しさとパワーにすることを可能にする。
    その人間の素晴らしさを、動物園にいる野生動物と対比させることで、観客に感動と共に楽しく面白く伝えたかった。

-- 入念な取材をもとに作られた脚本や、芸能プロの動物やCGを使わずに撮影した動物達など……そこまでして、真実にこだわった理由とは?

エンタテイメントには、ファンタジーやSFのように“全部作り物”っていう面白さもある。テーマパークに例えるなら、ディズニーランドのようなもの。本物の映画撮影所の中に作った、ユニバーサルスタジオは、実際に映画を撮ってる場所に、エンタテインメントを持っていったわけだから、賢いやり方だが、この映画も、本物の動物達の輝きを表現した旭山動物園を描くんだから。本当にあった事実だけで仕上げることが、面白さの基本だと思った。観客の本物に対する信頼感と共に、この映画に感動してもらいたいからね。“本物を楽しむ軸”をずらしてはいけないと思った。
    旭山動物園は「命の尊厳と平等」、「自然破壊」や「絶滅動物」へのアピールも合わせ持つ、今、世界で最先端を行くテーマパークなんだ。

-- 西田敏行さんを園長役にキャスティングした決め手とは?

まず、猛獣に負けない“面魂(つらだましい)”を持ってること(笑)。ライオンやゾウやゴリラって、すごい存在感だからね。ああいう迫力ある存在と一緒に画面に映っても、負けない魅力のあるキャスティングが是非必要だと思った。
    更に、西田さんが演じている園長役のモデル、旭山動物園の小菅園長は、日本の理想のお父さんのイメージがある。彼が“父親”の存在となり、あの坂東副園長という元いじめられっこを“息子”のように愛情をかけ、あれだけ立派な男に育てたんだ。坂東副園長が「ペンギンを空に飛ばしたい」って言った時に、園長は「おもしろい、飛ばして見せろ。夢は見られるだけ見ればよい」と言えた人柄。そのあったかさも合わせ持ったイメージの役者。それが西田さんだった。
    西田さんは、昔、番組の取材で野生のマウンテンゴリラに会いに行って運良く遭遇したらしい。そこで命知らずにも、思わずマウンテンゴリラの背中に触ったって言うんだな。そうしたら、そのマウンテンゴリラ、西田さんの方に振り向いて「なんだよ」って顔しただけで何事もなく終わったらしい。きっと仲間と間違えたんだろう(笑)。つまり西田さんは、マウンテンゴリラお墨付きの存在感を持っていると、本物が認めてくれたんだから(笑)。
    野生動物に負けない旭山動物園のお父さんのイメージを持った園長役を演じられるのは、日本中、西田さんをおいて他にないってことだね。

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-- 最後に、作品の見所とメッセージをお願いします!

これまでみなさんは、映画やTVの中で、大自然の中にいる動物の映像を見る機会は多かったと思う。しかし、動物園にいる動物の、こんなにも豊かな表情を撮影した映像は、『旭山動物園物語』が世界で初めてさ。2年の撮影期間、何百時間というフィルムをまわして、奇跡的なシーンが本当にたくさん撮れた。たとえば、オスのチンパンジーがメスのチンパンジーにエサをやる姿やゾウの雪合戦やSEXシーンまで、普通ではありえないショットがたくさん。しかも、旭山動物園の動物に対するポリシーをつらぬいて、芸をする動物は一切使わずに撮れたのが、自慢であり価値ある映像だと思う所以だね。
    動物園の動物が、まるで大自然の中にいるように輝いている姿をお見せできるので、お子さんと一緒に、家族連れで観てもらいたい。
    その上で、人間も動物も命は平等で、仲良くしなきゃいけない。そのことが、未来の地球を救うんだってことを感じてほしいね。
    旭山動物園はディズニーランドより深く面白いと感じてもらえれば最高だね。

プロフィール

マキノ雅彦(まきの・まさひこ)
1940年生まれ、京都府出身。5歳で『狐の呉れた赤ん坊』に映画初出演後、数多くの映画に出演。『プライド』(98)では日本アカデミー賞優秀主演男優賞を受賞するなど日本映画界を牽引する俳優として活躍する。また、叔父マキノ雅弘から監督名として「マキノ」姓を名乗る許可を得て、映画『寝ずの番』(06)で鮮烈な監督デビューを飾り、大ヒットを収める。