スペシャルインタビュー

原案/小菅正夫園長インタビュー 「動物が身近にいることで、人間が人間であることを理解できる。そうして動物園は“人”を育てるんです。」

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--映画の感想を教えていただけますか?

それを言葉にするのは、なかなか難しい。なぜなら、作品を客観的に見ることができないからです。この映画を観ていると、私がまるで西田さんの中に入っているような気分になる。作品で描かれているエピソードの多くが、事実に基づいているので、昔の記憶が蘇ってくるんです。西田さんが腹を立てているシーンは、一緒になって熱くなりましたし……当時の気持ちが思い出されて、なかなか冷静に観ることができませんでしたね。

--マキノ監督とは撮影に入る前に何かお話をされたんですか?

最初に監督とお会いしたのは、マキノ監督が園長役を演じていたTVドラマ(※『奇跡の動物園~旭山動物園物語~』フジテレビ系列で放映された)の撮影の最中でした。私のところに挨拶にいらしゃったんですが、その時に、旭山動物園を映画化したいとおっしゃって。TVドラマの撮影中だったのにね(笑)。

--という事は、映画用に創作されたエピソードが多いのでしょうか?

と、思うでしょう? ところが監督は、私や旭山動物園に関わったスタッフから話を聞きたいとも言うんです。だから私は当時の仲間を呼び集めて、監督に一回6・7時間ずつ何回も、昔の出来事をお話しました。その他にも、監督が突然、私の嫁さんを訪ねてきて、当時の話を聞いていったことも(笑)。そんな風に、監督は“真実”を集めていったんです。映画を“嘘”だと言っていたにもかかわらず、あれほど本物にこだわる人は、なかなかいないと思います。

--まるでドキュメンタリー作品のようですね

まさにその通り! 動物の撮影の時も、思い通りのシーンが撮れるまで、監督は何時間も待っていましたからね。たとえば、昔、旭山動物園にいたゾウが、私によく雪玉をぶつけてきた……という話を監督にすると、そのシーンをぜひ撮りたいとおっしゃって。とは言え、動物園の動物は野生動物と同じですから、人間が望むように動くはずがない。しかし不思議なことに、監督がじーっとカメラを構えて待っていると、ゾウが雪玉を投げたんですね。そういう奇跡のようなシーンが、この映画にはたくさんあるんです。

--旭山動物園の閉鎖を迫られるシーンがありましたが、実際に映画のような反対があったのでしょうか?

あの当時は、「動物園の予算三億円は、旭川市民の税金をドブに捨てるのと同じだ!」とまで言われていました。動物園に使うお金があれば、旭川市の全ての小学校に暖房施設を作ることができるんだ、とも。今でこそ、お客さんがたくさん来るようになって閉鎖しなくてよかったと思うかもしれませんが、あの言葉は、あの当時の正義だったと思います。

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--そこまで言われてなお、旭山動物園の復興にかけた理由とは?

たとえば皆さんが、自分のことを“人間”だと自覚できるのは、どういう時だと思いますか? 私はそれが、動物と会っている時だと考えています。地球上には、私達と違う価値観を持った生き物が、たくさんいる。その動物達の姿を見ることで、人間が人間であることの意味について考え、はじめて“人”として成長することができると思うんです。ですから旭川の子供たちが、しっかりとした人間に育つために、動物園は必要だと考えていました。

--では、最後に、この映画の見所をお願いします!

中村靖日さん演じる、吉田強とお母さんとの愛情を描いた人間ドラマや、不遇の時代を乗り越えた旭山動物園の再生物語など、さまざまな側面を持つ作品です。もちろん、動物達がたくさん出てくるので、何も考えずに見ても楽しめます。お母さんやお父さん、それにお子さんと、様々な人の心の中に、何かが残る映画ではないでしょうか。

プロフィール

小菅正夫園長
1948年生まれ、札幌市出身。北海道大学獣医学部卒。1973年旭山動物園に獣医師として就職、その後、飼育係長、副園長を経て、1995年園長に就任。「親子動物教室」「夜の動物園」などの斬新な企画を連発し、一時は閉園の危機に立った旭山を再建し、日本一の入場者を誇る動物園にまで育て上げた。『旭山動物園物語』で西田敏行演じる滝沢寛治園長のモデルとなっている。